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2023/12/01 (Fri) 19:36:23

『ラジオの歴史』こぼればなし④  投稿者高橋雄造

*スイープ・ジェネレーターのリーダー(大松電気)の大松さんにも,イン
タビューしました.研究測定用の高級品でなく工場で使えるような測定器を
作っている,ということでした.小生も,同社のオシロスコープとテストオ
シレーターを持っていました.大松さんは,会社が左前のとき質屋に行った
ことを話して下さいました.質屋には行ったことがなかったので,ずいぶん
ためらった(質屋の暖簾をなかなかくぐれなかった)とか.

 浜地常康,苫米地貢,伊藤賢治といったところは,ラジオ初期(”ラヂオ”
といった)の大立物です.下記拙稿と,『無線と実験』(2001年5月号,6月
号,”ラジオ雑誌の時代”)に書きました.前掲拙稿”電子工業史における中小
企業の足跡――(I)富士製作所(STAR)とラジオ工業”にもあります.
 苫米地は功労者ですが,”山師のような”と言われたりして,ことさら低く
評価されたようです.彼は”衆立無線研究所”を設立し,一統を引き連れ機材
を担いで全国を行脚し,ラヂオ(無線電話)普及の啓蒙デモ講演をしました.
伊勢神宮の御師のような活動でしょうか.起業家精神では伊藤の方がスケー
ルが大きく,米国シカゴで知識を仕入れた甥(弟?)の茨木悟を呼び戻して,
受信機・部品や雑誌だけでなく放送局までつくろうと計画しました.これも
一種の山師ですかネ.
 苫米地貢は,浜地の東京発明研究所と『ラヂオ』にも協力しました.東京
発明研究所には,古沢匡一郎や佐藤祐次郎を連れて参加したようです.
苫米地は,衆立無線研究所というネーミングから見ても壮士風で,算盤が
はじける商売人ではなかったようです.『無線と実験』という誌名に”ラヂオ”
でなく”無線”を使ったのは,苫米地の主張によるものであったと伝えられま
す.ラジオは無線電話(不特定聴取者向けのパブリック・アドレスでなく,
特定スポット・スポット間の通信)から分立したものであり,苫米地はその
伝統に固執したわけです.
 『無線と実験』創立グループの一人で赤門ラヂオ商会を興した伊藤は,日
本のラジオ史上の功労者です.その伊藤が同誌をあっさりと小川菊松(誠文
堂)に渡してしまい,商売は小川の方がずっとうわ手でした.小川は,『無
線と実験』を商業誌として成功させました.伊藤はX線・電気治療畑の人で,
雑誌よりも電気治療器の方に関心が向いていたのでしょう.同誌では,古沢
匡一郎編集長(苫米地の衆立無線研究所の副大将格であった)の貢献が大き
かった.小川が古沢をうまく使った,ということでしょう.
 伊藤氏は起業家としては大会社を作ることにはならず,電気治療器の会社
を業としました.これに成功した伊藤賢治氏は電気治療に宗教色を加味し
て,”自分の御真影(写真)を信者に拝ませている”と独白しました(『無線と
実験』誌上であったか).小生が会ったのは令孫で,東京・練馬区で伊藤超短
波という電気治療器店をやっておられました.この伊藤さんには.大物風・
カリスマといったことは感じられませんでした.
 茨木さんの三田無線(DELICA)について.小生は,ラジオ雑誌や『CQ』
掲載のDELICA測定器の広告を見て,そのラインアップの豊富なことに驚
きました.パノラミック・アダプターまであるのです.金欠の少年には,も
ちろんどれも高嶺の花でした.後年,DELICAのディップメーター(トラン
ジスター化されたもの)を買いました.ところが,ダイヤルをただ回すだけ
でメーター表示が上下する(発振強度が均一でない)のです.春日二郎さん
にこの話をしたら,コイルのボビンが細くQが低いので自己共振があるのか,
とおっしゃいました.6AK5三結発振の自作品の方がずっと良かった(144
MHz送信機の調整にも使った.6AK5は電極が小さいので,三結で超再生受
信機にも好適です.6AF4Aあたりも良いか).

 ついでに超再生受信機について.プロレタリア・ラジオ少年の小生は,50
MHz受信機もFM放送受信機も超再生でした.3A5のトランシーバーも作
りました.超再生受信機(ウルトラオージオン回路)では細部の接続にいろ
いろなバリアントがあります.試行錯誤した結果,次のようにするのが良い
とわかりました.コイルのタップは中点,グリッド・コンデンサーはセラミ
ックの50pF(50MHzの場合),グリッドリーク抵抗は5MΩで,その他端
は真空管のプレートに接続する.チョークコイルは,断線したガラス管フュ
ーズにエナメル線を巻いて,共振をグリッドディップメーターで受信帯域(た
とえば50MHz)に合わせる.低周波トランスのかわりにスピ-カー用の出
力トランス(二次巻線は開放,コンデンサー・カプリングでオーディオを取
り出す)でよい.
 その後,小遣いを貯めてFMチューナーを作りました.フロントエンドと
AFCは12AT7を2本です.組み上げて電源スイッチをいれたら,いきなり
美しい音楽が流れました.たまたまバリコンの位置が送信周波数に合ってい
たのです.あんなにうれしかったことはない.大学入試に失敗して浪人中の
ことでした.

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