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2024/01/09 (Tue) 08:56:51

『ラジオの歴史』こぼればなし⑫  投稿者高橋雄造

 ラジオ雑誌・アマチュア無線雑誌の編集部員やライターのプロフィルは,
興味のあるところです.前掲拙稿”柴田寛と『ラジオ科学――ラジオ雑誌の歴
史』”の36-37頁に,日本のラジオ雑誌43誌と主な編集者を一覧しました.
 『電波科学』の編集部には固い序列が存在したようで,有能であっても編
集長になれない(なれるはずがなかった)人もいたようです.白戸庸一・増
田正諠らが『電波科学』を出て『電波技術』を発刊したのには,このような
事情があったらしい.NHK/日本放送出版協会も元々はお役所みたいなもの
ですから,学歴身分制でもあったのでしょうか.
 斎藤健さん(JA1FD),菅宮夫さん(JA1CO)にもインタビューしました.
『CQ』誌等に書いていたライターにラジオ少年はあこがれていたものです
が,会ってみると(当然ながら)小生の抱いていたイメージとは少々ちがい
ます.お二人とも,実直な方という印象でした.藤室衛さん(JA1FC)には,
何度も会いました.小生の144MHz送信機は氏の記事を手本にした(2E26
プレートの同調回路と,これ用のチョークコイルの作り方など)ので,氏は
大変エライ人だと思っていました.実際の藤室さんは裏表などない気さくな
方でした.
 岡本次雄OM(JA1CA.『アマチュアのラジオ技術史』ほかの著者)を,
鎌倉のお宅にお訪ねしました.木賀忠雄OM(JA1AR)に同道していただき
ました.秋葉原に電気街が移る前からの神田のラジオ・電気関係の店につい
て教えて下さいました.”神田”(並四とか5球スーパー用の穴あきアルミシ
ャーシーを”神田シャーシー”と呼ぶ神田です)については読んだり聞いたり
していましたが,戦前からの実体験の話は格別で,非常に参考になりました.
岡本さんは独居老人で,ベッドに寝た切りのまま話をされる.詳細・明瞭な
お話で,迫力がありました.
 泉弘志さんには『絵で見るラジオのABC』等でお世話になった人も多いで
しょう.イラストを含めて独特の筆致で,初歩のファンにわかりやすいだけでなく,見て楽しい本でした.会ってみるとやや気難しい人のようで,父君
は皇国史観で有名な東京帝国大学教授平泉澄だということです! 何かチグ
ハグな印象を受けました.
 ”文は人をあらわす”と言いますが,読者が持つ印象と著者の人柄とは別物
のようです.これは,読者の勝手な思い込みによるものでしょう.
 通信型受信機の研究を書いたSさん(日本人)がいました.彼は米国在住
で,小生は米国に行った折に氏に会いました.日本にいたころラジオ雑誌へ
の投稿者からライターになり,フィアンセに誘われて米占領軍で放送傍受の
仕事に従事するようになって,沖縄の基地にも勤務したとのことです.短波
受信機にくわしいのは当然です.“籠の鳥”状態での仕事だったらしい.その
後,Sさんは米国へ移住しました.初対面で短時間の面談,話がインテリジ
ェンス(諜報)活動関係に及ぶので,立ち入った質問はできませんでした.
その女性はもともと米インテリジェンスのスタッフで日本人の氏をスカウト
した,と想像することもできるでしょう.このような例はほかにも相当数あ
ったにちがいありません.その後S氏は,有償で来日インタビューに応じる
という提案をしてきました.小生にはその金額を工面できず,これは断念し
ました.なお,小生が行なったインタビューはすべて無償で,実現しなかっ
たこの件は唯一の例外です.

 一度だけのインタビューでは,肝心な点を率直に質問しにくいものです.
核心にふれることは,往々にして,本人はしゃべりたくない(都合が悪い)
からです.初対面のインタビューでは,こちら(小生)も予備知識不足で問
題の中心がよくわかっていない,という事情もあります.インタビューも二
度以上になると,”頃合い”がわかってきます.何を質問してはいけないか(逆
鱗にふれる)もわかってきます.ことの核心は,本人でなく,周囲の人(で
きれば複数)から訊き出すほかありません.(新聞記者によるインタビュー記
事の多くがハチャメチャなのは,事前調査不足のうえ,二度もインタビュー
する暇がなく,あらかじめストーリーを作っておいてこれにあてはめて記事
を書くからです,)インタビューでは事前調査がいちばん大事です.その意味
で,前述の指南役・相談相手の方々の存在が大きかった.インタビュー相手
が”なんだこいつ,何も知らないんだ.テキトーにあしらっておけ”と思うの
と,”おや,ちょっとはわかっているな”とのちがいです.また,相手が”有名
人”の場合は,いろいろなインタビューアーから同じ質問を何回もされていて,
答も類型化されて本人のアタマに刷り込まれています(新聞記者にはこのよ
うな答をすれば,それでよいのです).有用な情報をしゃべってもらうには,
類型化された答以上のものを引き出す力が必要です.

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